誰もがいずれは高齢者になります。その時、生活を支える基礎となるのが年金です。年金制度はすべての国民・労働者にかかわる問題です。
この年金の不当な引き下げの違憲性を問い、年金制度の改善をめざして、年金者組合の組合員が原告となってとりくんでいるのが「年金引き下げ違憲訴訟」です。具体的には2012年の年金法改悪とそれに伴う減額処分について争っています。全国で同様の裁判がとりくまれ、神奈川を含む3県以外はすべて最高裁で、原告の主張を退ける不当な判決が出されています。
しかし、神奈川の裁判は全国の他にない主張を行っており、最高裁の判断が注目されます。
年金は積み立てている
神奈川の上告理由書では、憲法29条「財産権」に違反すること、理由として、①前提となる財政方式の問題、②年金財政の将来見通しの誤り・ウソ、などを主張しています。特に財政方式を問題にしているのが神奈川の特徴です。
年金財政のニュースで「今の年金給付は、現役労働者の保険料で賄われている」と聞いたことがあるかもしれません。これを「賦課方式」と言います。
しかし、もともと日本の年金制度は、自らが支払った保険料を積んでそれを基本に年金額を受取る「積立方式」として始まり、国会などで一度たりとも財政方式を変える議論をされたことがありません。「積立方式」だからこそ、現在の年金積立額が260兆円にものぼっています(「賦課方式」であればこれほどの積立とならない)。ところが国は「賦課方式」を前提として主張し、裁判所もそれをうのみにしています。
全国の裁判や神奈川の1審・2審も「賦課方式」を前提に、「世代間不公平」などを理由に法改悪や年金減額には根拠があるとしています。しかし前提となる財政方式の主張・認識に誤りがあると、神奈川の裁判では主張しています。「積立方式」であれば「世代間不公平」などもあり得ず、国の主張の根拠がないことになります。
地裁・高裁でも、国は「積立方式」で始まったことは認めており、財政方式が変わったとする時期や根拠を明確に示すことができていません。すなわち、財政方式の基本は変わっておらず、誤った財政方式を理由にした法改悪や減額は違憲・違法ということになります。
財政見通しのウソ
財政見通しも重要な論点です。国は12年の制度変更の根拠として、財政見通しを示していましたが、それは「厚生年金は2021年に、国民年金は2017年に積立金が枯渇する」という恣意的で極端なものでした。実際には今もばく大な積立金があります。
さらに、新制度導入後の見通しについても、高齢化率がピークとなる2040〜50年でさえ厚生年金総支給額は年73・5兆円としているにもかかわらず、65歳以上人口が50年の6~7割程度まで減少するとされる2100年の年金総支給額が121・5兆円になるという、でたらめな見通しを説明して年金法改悪を強行しています。
ウソの見通しを根拠とした法改悪は違法であり、是正が必要です。
神奈川労連は引き続き年金裁判を支援して勝利をめざすとともに、最低保障年金制度の確立など抜本的な制度改正を求めていきます。