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2025年9月19日

NEW!春闘で親会社の責任を追及する横断幕を設置したら裁判起こされた

帝蚕倉庫が、労働組合の横断幕に対して損害賠償と謝罪を求めた裁判。港湾労働組合が勝訴、判決が確定しました。

声 明

1 2025年9月4日、横浜地方裁判所第7民事部(高木勝己裁判長)は、帝蚕倉庫株式会社(原告・以下「帝蚕倉庫」という。)が港湾労働組合(被告・以下「組合」という。)に対し、名誉棄損として損害賠償を求めた裁判について、帝蚕倉庫の請求を全面棄却し、被告・港湾労働組合の全面勝訴となる判決を下した(横浜地方裁判所令和6年(ワ)第4719号 損害賠償請求事件)。そして、帝蚕倉庫は期限までに控訴せず、2025年9月19日、本判決が確定した。

2 本事案は、組合が帝蚕倉庫の子会社である帝蚕運輸株式会社(以下「帝蚕運輸」という。)との労働争議(春闘の協議)において、2024年8月、「帝蚕運輸は帝蚕倉庫の収奪に抗議し、利益を労働者に還元しろ」と記載した横断幕を設置したことに端を発する。

本労働争議において、組合は春闘として帝蚕運輸に賃上げ等を求めたが、同社は応じようとしなかった。組合は、帝蚕運輸が賃上げ等の要求に応じないのは、帝蚕運輸が親会社である帝蚕倉庫からの委託を受けて入出庫の管理・作業や梱包などの業務を行っているが、帝蚕倉庫から適正な料金を得ていないためではないかと考え、一定の根拠をもとに帝蚕運輸に対して団体交渉等で質問したが、同社はまともに返答しようとしなかった。

そこで、組合は、帝蚕運輸は帝蚕倉庫から適正な料金を得ていないのではないかと考え、帝蚕運輸は帝蚕倉庫との料金の交渉を行って賃上げを実現すべきであるとし、前述の横断幕を設置したものである。

その後、組合と帝蚕運輸との労働争議は妥結した。しかしその後、帝蚕倉庫が組合に対し、横断幕を設置したことを抗議する連絡があった。組合は横断幕を撤去したが、その後、帝蚕倉庫が本訴訟を提起するに至った。

3 判決において、「ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉棄損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為が違法性を欠く」と述べた。その上で、本横断幕の表現について、「(組合が)帝蚕運輸は原告(=帝蚕倉庫)と料金の交渉を行って賃上げを実現するべき旨の意見ないし論評を述べた」ものであり、「本件上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実と認められ、また人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものということもできない」と認定した。

すなわち、組合の設置した横断幕の表現が事実の適示ではなく「意見ないし論評」であることを前提に、労働組合の正当な活動として公共性・公益性が認められ、かつ、組合の述べる前提事実(帝蚕運輸が親会社である帝蚕倉庫から適正な料金を得ていない)について一定の真実である旨を認定したものである。

本判決内容は事案の真相を正しく認定するとともに、労働組合としての正当な活動を評価したものであって正当である。

また、帝蚕倉庫は本横断幕の設置について、偽計業務妨害罪に該当するとして組合を刑事告訴していたが先般、不起訴が確定している。

4 本判決が確定され、今回の組合の一連の行為に正当性が認められたことは大きな意義を有する。

一方で、組合及び組合員は、労働争議における自らの正当な活動に対し、親会社が裁判を提起したことで、自らの活動に問題があったのではないかと恐れる事態が生じた。このように、今回の帝蚕倉庫の訴えは、組合の正当な活動を委縮させるものであって不当である。また、本訴訟では、子会社である帝蚕運輸の代表者が、組合の活動を非難する内容を述べる陳述書が、帝蚕倉庫から証拠提出された。組合員の使用者である帝蚕運輸が、組合との労働争議が妥結しているにもかかわらず組合の活動を不当に非難したもので問題である。

これらの点から、本件における帝蚕倉庫及び帝蚕運輸の一連の行為は、組合に対する支配介入(労働組合法7条3号)に該当するといえる。

5 本判決が下りた後、組合は帝蚕倉庫・帝蚕運輸に対し、一連の行為についての組合への謝罪と、今後、正当な労使間を築くことを前提とする全面解決の要請を行い、団体交渉を求めた。

しかしながら、帝蚕運輸は組合との団体交渉に応じたものの謝罪等を拒否し、帝蚕倉庫に至っては、労使間の関係に無いなどとして交渉を拒否する姿勢を示しおり、不当である。

組合は、判決後のこの両社の対応に全面的に抗議するとともに、今後も全面解決を求めて両社との交渉を継続することを宣言する。

                                            以 上

                          2025年9月19日

港湾労働組合

港湾労働組合・帝蚕運輸分会

港湾労働組合弁護団

港湾労働組合事件 声明(判決確定を受けて)

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