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2025年7月10日

参院選神奈川選挙区立候補・参政党・初鹿野裕樹氏への謝罪、並びに発言の撤回を求める声明

自由法曹団神奈川支部は7月9日、「参院選神奈川選挙区に立候補する参政党・初鹿野裕樹氏によるヘイトスピーチに対する抗議と日本に在留する外国人への謝罪、並びに発言の撤回を求める声明」を発表しました。

神奈川選挙区で立候補している参政党・初鹿野氏による、選挙運動における外国人に対する不当な発言に抗議する内容となります。


「参院選神奈川選挙区に立候補する参政党・初鹿野裕樹氏によるヘイトスピーチに対する抗議と日本に在留する外国人への謝罪、並びに発言の撤回を求める声明」

 

1 参議院選挙神奈川選挙区に立候補する初鹿野裕樹氏は本年7月3日、横浜市内で行った選挙演説で、「外国人は生活保護を受給する権利がないにもかかわらず保護という観点で(支給され)、日本人はなかなか受給できない」「日本人が困っているのに外国人ばっかり(支給される)のはおかしい」と述べた。また初鹿野氏は、「われわれの税金で外国人は生活保護をもらっている」とも述べた。

これは、日本に在留する外国人全般について、外国人であることのみを理由に一方的に差別する言動であり、ヘイトスピーチそのものである。

 

2 まず大前提として、外国人は生活保護の支給対象となる。1954(昭和29)年厚生省通知に基づき支給がなされている。2014年7月18日の最高裁判決においても、外国人が行政庁の通知等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得ることは認めている。  ゆえに、「外国人は生活保護を受給する権利がない」との発言は日本の法制度や運用と異なっており、誤りである。

 

3 また、日本に在留する外国人すべてが生活保護の支給対象となっておらず、永住資格等の一定の在留資格が必要であり、かつ、その支給にあたっての調査において優遇されている事実もなく、すなわち、外国人が日本人に比べ、生活保護が支給されやすいというものでもない。

そして、厚労省発表の被保護者調査によると、本年4月時点での外国人の受給率は全体の3.2%(被保護者実員数199万0418人に対し、被保護の外国人の人員数6万4437人)、世帯数では全体の2.8%(被保護者世帯数が164万3444世帯に対して被保護の外国人世帯数が4万7206世帯)であり、受給者は全体のわずか数パーセントにすぎない。

これに対し、初鹿野氏は本人ブログ記事(本年7月6日付「神奈川新聞社に抗議いたします」)において、「日本人の受給率は1.65%、日本人世帯の受給率は約2.9%(2023年の保護世帯165万世帯を全世帯5631万世帯で除したもの)である」とし、外国人が人数比で日本人の約2倍もの保護を得ていることは紛れもない事実である、などと述べる。

しかし、初鹿野氏が述べる日本人の受給率1.65%は、当時の受給者201万人を我が国の人口約1億2000万人で除したものであり、同様に世帯率も保護世帯165万世帯を全世帯5631世帯で除したものであって、前述の外国人の受給率とは比較の対象が全く異なっている。

日本の在留外国人は2024年12月時点で約376万人である(出入国在留管理庁発表)。被保護の外国人の人員数6万4437人を前述の約376万人で除した場合、その率は約1.7%であり、初鹿野氏の述べる日本人の受給率1.65%とほぼ同水準である。

ゆえに、初鹿野氏の「外国人が日本人の約2倍もの保護を受けている」という主張は誤りであって、デマそのものである。

このように初鹿野氏は、有権者に対して誤った数字や事実を示し、外国人差別・デマを述べ続けるものであり、許されるものではない。

 

4 初鹿野氏のみならず、同氏の所属する参政党は、今回の参議院選挙戦において「日本人ファースト」なる標語を掲げ、排外主義的発言を繰り返している。

現在、日本に在留する在留外国人は正規の滞在資格を持ち、日本の法令を遵守し、正当な税金、社会保険料などを支払っている。それだけではなく、少子高齢化の日本社会において、労働現場の人手不足を補い、出身国の文化を日本に伝え相互交流を深める等、既に日本社会の重要な構成員となっている。

しかるに、本選挙を通じて流布されている言説は、外国人が不正に生活保護を受給し日本人の生活を脅かしているとか、外国人の犯罪が増えたことによって治安が悪化したとか、外国人労働者が流入したことによって日本人の賃金が下がっている等と、虚偽の情報に基づいて在日外国人を貶めるものであって、外国人に対する偏見と差別を煽り、地域社会を分断するものであって、到底看過できない。それだけでなく、今般の選挙において重要な争点は、物価の高騰、米不足、賃金の目減りによる国民生活の圧迫である。財政難の中で限度なく伸び続ける軍事予算も看過できない。ところが、参政党の候補者らは、有権者の不満を外国人に向けることによって真に解決すべき問題を国民の目から逸らし、問題の本質を隠してしまっているのである。

初鹿野氏は前述の本人ブログ記事において、日本人の困窮者が生活保護を打ち切られた事案などを紹介し、「外国人の方が優遇されている」などと表現するが、いうまでもなく、その事案に関しての批判の矛先は、その生活保護を打ち切った自治体・国であり、外国人では決してない。

 

5 自由法曹団神奈川支部は神奈川で働く弁護士たちの団体である。日ごろから差別問題や生活者の困窮問題などに対して活動を続けてきた。

当支部は、初鹿野氏の根拠なき発言・デマに対し強く抗議するとともに、同氏に対し日本に在留する外国人への謝罪、並びに発言の撤回を求める。

 

2025年 7月 9日

自由法曹団神奈川支部

支部長  藤田 温久

2507 自由法曹団支部声明・参政党発言

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