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2023年神奈川地方最低賃金審議会答申について


2023年神奈川地方最低賃金審議会答申について

8月4日、神奈川地方最低賃金審議会は、2023年神奈川県最低賃金について、41円引き上げて時間額1112円と答申しました。4月6日には中央最低賃金「目安制度の在り方に関する全員協議会」は、地域間格差の拡大抑制やランク間の労働者の偏り是正のため、これまでのABCの4ランクをABCの3ランクに変更すると2年間の議論の末に決定しました。中央最低賃金審議会は7月28日、国民生活を直撃する物価高騰と賃上げ機運を考慮したとして、Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円の目安を示しましたが、さらに地域間格差を広げる結果となりました。目安通りに各都道府県で引上げが行われた場合の全国加重平均は 1,002 円となります。この場合、全国加重平均の上昇額は 41 円(昨年度は 31 円)となり、昭和 53 年度に目安制度が始まって以降で最高額となり、引上げ率に換算すると 4.3%(昨年度は 3.3%)となります。

41円の目安額を受けて、8月1日から8月4日まで神奈川地方最低賃金審議会が開催されましたが、労働者側・使用者側双方の主張は一致を図れず、8月4日の第4回専門部会では、公益委員が妥当と判断した、目安通りの41円引き上げを提案し採決の結果、使用者側委員ひとりが反対、公益委員含む13人の賛成で、公益委員提案通り41円引き上げの1112円が決まりました。
労働者側委員は、急激な物価高騰が労働者の生活に与える影響が大きいことや神奈川県はパートタイム労働者比率が高いため、最低賃金改定による影響率は全国1高い水準であること、労働力確保の必要な水準を考慮すべきであることなどを主張しました。いっぽう、使用者側委員はかつてない消費者物価の上昇への対応や深刻な人不足を解決するために、賃上げが必要であることは多くの経営者が認識しているとしながらも、中小・小規模事業者、特に2次、3次下受け取引における価格転嫁は進んでおらず、収益改善が進まない中で、賃上げや人材確保の対応に苦慮していることを主張し、中小・小規模事業者が置かれた厳しい状況を十分に勘案して審議を進めるとともに、「取引価格の適正化」をすすめ、生産性向上の取り組みへの強力な後押しなどを求めました。

神奈川労連は7月中に労働局や公益委員選出団体(公認会計士協会・神奈川県弁護士会・神奈川県経営者協会)に対する要請や懇談を行ってきました。各団体とも賃上げには一定賛同しますが、最低賃金が引きあがっても、社会保険・税金の壁があると効果は薄く、労働者自身が、「働いて社会保険料・税金を納める」意識を持つことが必要であること、最低賃金を下回る状況は初めて知ったが問題である、中小企業支援を強める必要は神奈川労連の主張と同じであるなど貴重な意見交換ができました。

2007年の最低賃金法改定を境に2桁の引き上げが続いています。改定法には「生活保護との整合性に配慮する」ことが明記され、当時、生活保護水準との乖離が全国で1番大きかった神奈川県は、その乖離を解消するため、それまでにない大幅引き上げをしました。今年、中央最低賃金審議会では、生活保護との乖離は昨年に引き続き生じていないとしていますが、2011年6月に提訴した、神奈川最低賃金裁判では、生活保護基準と最低賃金を比較する際に5つのごまかしを使って不当に生活保護基準を低く算出していることを指摘しており、この主張は今も変わりません。中央および地方最低賃金審議会が採用する、最低賃金決定の3要素の1つである、労働者の生計費水準は非常に低く、その根拠は明らかではありません。また、この間は政府の「最低賃金は1000円をめざす」という号令の元に地方審議は進められています。地方の独自性を発揮した調査や審議があってこそ、審議会の役割は発揮できると考えます。

神奈川県の最低賃金は10月1日施行予定ですが、神奈川労連は、この後、異議申し出を行います。

神奈川労連最低賃金闘争委員会

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