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2022年11月10日

”当事者の声が裁判所を動かした”「神奈川生存権裁判」で画期的な勝利判決

 「うぉ~、やった」「よし」喜びの歓声と拍手が、横浜地裁前にこだましました。

 10月19日、横浜地裁は『神奈川生存権裁判』について、画期的な勝利判決を言い渡しました。この裁判は、2013年から3回に分けて実施された、最大10%もの生活保護費の引き下げについて、県内の生活保護利用者48人(提訴時)が、国と自治体を相手に生活保護扶助基準の改定の取り消しを求めたものです。

二つの「調整」

 厚労省は、二つの「調整」を根拠に、生活保護水準を引き下げました。一つは、生活保護を利用していない世帯と比較しての「ゆがみ調整」、もう一つは、物価の下落に基づく「デフレ調整」です。

 判決は、「ゆがみ調整」については、「生活保護基準の…適正化を図ることを目的として行われたと認められる」とし、厚労大臣が検証結果をふまえて、「(調整の)必要があると判断したことに不合理な点があるとはいえない」として、原告らの訴えを退けました。

違法の3つの理由

 一方で、「物価が下落したから、生活保護費も引き下げる」という「デフレ調整」については、3つの理由で違法と判断しました。1つは、そもそもデフレ調整を行う必要についてです。「ゆがみ調整」を行ったうえでデフレ調整を行うには、「統計等の客観的な数値等や専門的知見をもって説明する必要があるべき」としたうえで、「十分な説明をしているとはいえない」、「厚生労働大臣の判断は、…合理的整合性を欠き…整合性を有しない」と断じました。

 2つは、物価の比較を行う際、他の年に比べて物価が高い年度を起点としたことは、合理性・整合性がないとしました。

 3つは、厚労省が用いた物価指数における消費構造と、保護利用世帯の消費構造が異なっていることです。特に、厚労省の指数ではテレビやパソコンを含む教養娯楽の物価が、下落の大きな要因とされていましたが、保護世帯への影響は相当限られたものと判示。厚労省試算の4・78%もの下落率に相当するような「可処分所得の実質的増加が生じたものと評価」できないとしました。

生活保護法に違反

 判決は最後に、「本件改定の影響は、保護受給世帯のおよそ96%の世帯に広く及ぶものであり、かつ、減額の幅も大きいことに照らせば、その結果も重大である。したがって、厚生労働大臣のデフレ調整に係る判断には、最低限度の生活の具体化に係る判断の過誤、欠落があるというべきである」として、「本件改定は、…厚生労働大臣が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法なものというべきである」と結論しています。

 判決後の記者会見で、原告は「これを機に生活保護利用者の実情を知って欲しい」、「電気代の値上がりで生活は大変。保護水準を改善して欲しい」などと訴え、テレビや新聞などでも大きく報道されました。

 神奈川労連は25条共闘として、最低賃金裁判・年金引き下げ違憲訴訟とあわせて、生存権裁判をスタートからともに闘ってきました。引き続き裁判を支援し、生活保護水準の改善や、すべての国民の所得向上にむけてとりくみを強めていきます。

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(上の写真)勝利判決を喜ぶ原告や弁護団、支援の仲間

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