神奈川労連

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最低賃金引き上げの取り組み(意義・目的)


私たちは次のようなことから、2011年6月30日に横浜地方裁判所で裁判を起こしました。

「最賃1,000円以上、最低賃金裁判」

1.最低賃金裁判闘争の意義と目的

  1. 憲法25条の「健康で文化的な最低限の生活保障(ナショナルミニマム)」と27条「勤労の権利」に照らし、誰もが働いて健康で文化的な最低限の生活ができることを確保する岩盤として、法定最低賃金の抜本的引き上げをおこなう事が必要である。賃金の国際比較を見ても1997年から日本だけが賃下げの状態が続いている。 非正規・不安定雇用など、差別的な処遇の蔓延が賃金下落の原因となっており、働いても暮らせない雇用が急増している。ワーキングプアをなくすために法定最低賃金にこそ生計費原則を確立することが必要である。
  2. 2010年10月21日効力発生の神奈川地域最賃(時間額818円)は、2008年に最低賃金法の第9条に定められた「生活保護との整合性」に違反する金額であり、「中央の目安」を全国唯一1円下回る時間額を神奈川労働局が決定した異常な事態となっている。 また、今後「低く見積った時間額836円を上回ったからそれでいい」というものではない。厚生労働省の「低く見積もった生活保護との整合性のごまかし」を社会的に告発し、一刻も早く本来の生活保護基準を下回らない最低賃金額に引き上げることが必要である。
  3. 民主党政権での2010年6月の政労使合意「2020年までに最低800円、全国平均1000円」の早期の着実な達成を迫ること。 また、各地の生計費調査をもとに、世界の常識である全国一律最低賃金制度実現への足がかりとすることが求められる。
  4. 最低賃金は時間給で働く非正規労働者だけの問題ではなく、正規の賃金体系に波及し、底上げをおこなうものである。最低賃金1,000円が実現すれば月額155,000円となり、この金額は国家公務員高卒初任給(140,100円)、民間高卒女性初任給(153,000円)より高くなり、これらの正規の賃金が必然的に引き上げられる。 また、正社員でも月の実労働時間で月額賃金を割れば現行の最低賃金ぎりぎりという労働者も多数存在する。
  5. 法定最低賃金を生活できる水準に引き上げることで、生活保護基準改悪の動きに歯止めをかける。全ての労働と国民生活の最低保障・ナショナルミニマム・ディーセントワーク確立に寄与するものとして、一刻も早く1000円、そして1400円台の最低賃金へ到達させるための取り組みである。大衆的運動的確信と共感を広げ、裁判を通じてこれを勝ち取る取り組み が求められている。

2.なぜ裁判闘争を選択するのか。裁判で何を争うのか。

  1. この間の最低賃金引き上げの運動を神奈川では全国に率先して行ない、この間大幅な引き上げを実現してきた。しかし、昨年10月21日効力発生の神奈川地域最賃(時間額818円)は、2003年改正最賃法で定められた「生活保護との整合性」について3年の経過措置期間の最終年に至っても厚生労働省が低く見積った時間額836円を上回らず、「中央の目安」を全国唯一1円下回る時間額を決定した異常な事態となった。
  2. 今年の経団連の「経労委報告」では、最低賃金の引き上げに重大な懸念を示し昨年までの引き上げ幅さえも許さない姿勢を鮮明にしている。昨今の民主党政権のマニフェスト見直しや財界よりの政策転換の姿勢や、3.11大震災の影響から、2010年6月の政労使合意「2020年までに最低800円、全国平均1000円」がこのまま進むとはいえない政治情勢である。 また、生活保護水準そのものを引き下げようとする厚生労働省の動きも明確になった。従って 厚生労働省が低く見積った「生活保護との整合性時間額」を下回っている5県さえ上回れば これ以上の最低賃金引き上げが停滞し、むしろ引き下げていく可能性が高い。
  3. こうした情勢に対抗し最低賃金の大幅引き上げを実現させていくためには、私達の主体的運動の輪を更に広げるとともに、社会的に強いインパクトのある取り組みへのチャレンジが必要である。 私達は裁判闘争を通じ、現行の最低賃金では生計を維持できず、「生活保護との整合性」を定めた最低賃金法に違反することを最低賃金ギリギリで働く原告の生活・労働の実態と声によって広く告発し、勝利判決を勝ち取り、最低賃金の大幅引き上げの早期実現 を迫るものである。同時に、今年の最低賃金の審議にも大きな影響を与え、大幅な最低賃金 引き上げの改定額を勝ち取っていく。
  4. 訴状の主文は「少なくとも時給1000円以上への引き上げが法に照らして必要であること」を主張し、判決文に書かせることを迫るものである。厚生労働省の低い計算式基準(836円)に対し、長年我々が運動で主張してきた算出方法による時給1471円の基準がある。 法廷では当然1400円以上が妥当であることを主張の背景に据えつつ、憲法と最賃法に照らし、「いくらなんでも国の計算式と最賃額は合理性を欠いて低過ぎる。国の裁量権を逸脱している」とし、時給1000円を主張する。社会運動で不当性を争う1471円と、法律違反で争う1000円を固く結びつけ、勝利判決を勝ち取ってまず1000円を実現し、さらにその後の大幅引き上げへの道筋をつけていく。

<裁判闘争に当たっての請求の主旨> ①訴訟類型:行政義務付け訴訟 ②請求の主旨:「神奈川県労働局長は最低賃金法第9条第1項に基づく神奈川県の地域別最低賃金として金1000円以上の金額を決定せよ」

3.裁判闘争は、新たなチャレンジ=社会運動として取り組む

  1. これまでの最低賃金引き上げの取組みは「最低賃金生活体験、ハンガーストライキ、ワッペン行動、国会要請行動、銀座デモ、各団体との懇談会」など取り組まれ、社会的世論作りと国会での圧力をかけ、全国で初めて最賃の大幅引き上げを求める横浜弁護士会声明が出された。 裁判闘争を通じ、最低賃金を巡る争点と社会的意義を鮮明にし、さらに大きな共感と確信の輪を広げる新たな社会運動として取り組んでいくものである。
  2. 最低賃金引き上げと非正規労働者への労働組合運動の輪を一気に広げる取組みとしておこなっていく。全単産、個人加盟ユニオン、地域労連から原告を出して全ての労組・単産・地域の取り組みに広げる。関連・委託・非正規労働者の組織化と運動に取り組む労働運動への転換を図る取り組みにしていく。 全ての単産(単組)、地域組織、地域労組から、原告2名以上、サポーター20名以上の組織をして神奈川労連の全組織挙げての裁判闘争にしていきます。原告対象者には「社会的賃上げ=最低賃金の1000円以上の引き上げで、自分と社会を変える取り組みの先頭に立ってほしい」と訴えてください。 労組内に該当者が見当たらない場合、該当する労働者=関連・委託や直雇用の非正規労働者 の労組組織化と一緒に取り組んでいきます。特に、「自立型非正規」といわれる、長時間働いて自らの収入で生計を立てている方や、時給1000円未満で働いて所得不足分を生保受給している人を原告 になってもらえるよう組織してください。また、月給者でも時給者でも時給で1000円以下であれば誰でも原告になれますし、103万、130万以下に制限して働いている方もOKです。
  3. 最低賃金引き上げ意義と「最低賃金と生活保護費との整合性の5つのごまかし」について、高校生が読んで「へーそうか、ふざけんじゃないよ!」と感じ、1000円そして1400円台の最低賃金へ到達への確信と共感が広がるようなマンガ主体のパンフを3千部作成しました。 弁護士や労働組合がミニ・出前学習会を旺盛に行い今回の裁判闘争の意義と争点を学び、共感と確信の輪を広げていく。
  4. 「原告になってみよう」、「サポーターになろう」とパンフで呼びかけ、原告100人以上とサポーター1000人以上を必達の目標として運動の輪を大きく広げる。切実な要求を持つ当事 者の多くが原告になってもらい、その周りにサポーターを広げていく。法廷闘争は、毎回大法廷を原告、サポーターで埋め尽くすような意気込みで闘う。サポーターは最低賃金引き上げに賛同し、裁判を応援するあらゆる団体・個人が対象です。 会社で正規・非正規で働く方はもちろんのこと、パート・アルバイトで働く(働いていなくても)高校生・大学生・主 婦も大歓迎です。この闘いは従来の労働組合内部の取り組みにするのではなく、「従業員の賃金アップしてやりたいができない中小企業主」や労働・生活相談などを行なっている地域組織、NGO/NPO、宗教組織など団体、個人にも広くサポーターの輪を広げていきたいと思います。
  5. パンフの普及・学習と最低賃金引き上げの署名を旺盛に行い、最低賃金審議委員推薦団体など(弁護士会、会計士会、学者、中小企業団体、司法書士会、労働・市民団体)との懇談を進める。今年の最賃改定審議に大きな影響を与え、大幅な引き上げを勝ち取る。

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